312809 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

chapter7

LastGuardian

chapter7「Criticism」

その日は、とてつもなく早く日が過ぎて行ったようだった。
レドナは登校時の呼び出しをかなり心に止めていた。
もし戦闘が起こりそうな場合どうするか。
戦闘は無くとも、敵の罠、敵からの包囲での連行等も想定される。
しかし、敵である確立は低かった。
理由として、神下高校の制服を着ていることだ。
レドナ達が戦ってきたイクトゥーはどれも黒いコートで身を隠していた。
だが、その考えも良く考えれば穴があった。
イクトゥーのファーストアタックは2年数ヶ月前。
その間に転校等の理由で神下高校に入ればなにも怪しくない。
それに、イクトゥー全員が黒いコートを着ているという訳でもないだろう。
中には頭のいい奴が、わざと紛らわすために他のイクトゥーにはコートを着せているのかもしれない。
とりあえず、今は全て疑ってかかるべきだ。
真実はその後にちゃんと結果で返ってくるはずである。

そして、放課後はいつもと変わらぬ時間に平然とやってきた。

真「なんかあったらちゃんと呼べよー!」
香澄「フィーノちゃんにはちゃんと連絡しておくよ」
レドナ「あぁ、サンキュー」

2人は戦闘能力はまったくと言っていいほど無い。
それは、対人戦というわけではなく、相手にするのは人を超越した存在だからだ。
そのため、レドナは2人にはなるべく早く下校するように言った。
そして、何かあれば、すぐにフィーノに連絡が行くよう2人には鳳覇家に居るよう頼んである。

レドナは、直ぐに鞄を持って、人目につかぬよう屋上に行った。
ドアを開けると、夕日のオレンジ色に染まる空が見える屋上に、2人の少女と少年が立っていた。
1人は神下高校の制服を着た、赤いツインテールの女。
1人は神下高校付近の陽葉中学校の制服を着た、金髪の男。
しかし、その姿には見覚えがあった。
そして、レドナは驚きを隠せずにいた。

レドナ「カエデ、ロクサス・・・なんでここに!?」

レドナは2人の名前を口にした。

カエデ「さぁ?なんでだろーね。
    ぁ、気にしなくても反逆者の後始末とかじゃないから心配しなくていいよ」
ロクサス「それに、仮にそんな命令だされても、兄貴は殺せないからな、ははっ」

2人は、レドナに対し、敵対心はないようだ。
それか、2人でもレドナは倒せないようにも捉えられるが、その可能性は低い。

レドナ「でも、反エクステンドのお前らが俺と接触するのは危ないんじゃないか?」
カエデ「そんなの知ったこっちゃ無いわよ。
    誰に会おうが会うまいが、そこらへんの自由は少しは利いてるよ」

レドナが言った反エクステンド。
そう、カエデとロクサスは反エクステンド機関の一員であり、レドナの友人以上の仲であった。

カエデ「長話もなんだし、単刀直入に言うね。
    私達と一時的に手組んで、イクトゥーを倒さない?」

思いがけない発言だった。
まさに、またとないチャンスの到来。
レドナにしても、この2人の戦力レベルの高さは知っている身で、心からお願いしたい気分だった。

レドナ「こっちも乗りたい気分だが・・・。
    でも、エクステンドと反エクステンド、協力はありとして勝手にしてなんか言われないか?」
ロクサス「心配すんなって!
     上からも、やばそうなら組んでもいいって言われてるよ、強敵のイクトゥーだし」

少し悩んで、レドナは決心した。

レドナ「分かった、それじゃあ、ここのガーディアンとか協力者とか教えとく」
カエデ「レドナにしては、すんなり教えるんだね~」

ちょっと不思議そうに、カエデがたずねた。

レドナ「お前らは信用してるさ、"昔の戦友"としてな」


その後、レドナは携帯で、真と香澄に連絡し、フィーノと一緒に屋上へ来ることを指示した。
数分後、大急ぎで来た様な感じで、3人は到着した。
フィーノに関しては、学校関係者以外立ち入り禁止だったので、真とフィーノはわざわざフェンスを飛び越えてきたらしい。

真「お待たせ!・・・って、あ、朝の神下高校の人!?」

到着するなり、真が驚いた。

香澄「驚くこと無いよ真君、屋上に来てって言った本人なんだし」

苦笑しつつも、真に優しく教えてあげた。

フィーノ「で、レドナさん、こちらの方は・・・?」
レドナ「あぁ、反エクの協力者、カエデ・ハーオウムとロクサス・ホロウだ」
カエデ「よろしくね」
ロクサス「よろしくっ!」

まるで、違う機関に属するとは思えないほどの馴れ馴れしさで、2人は接した。
しかし、あまり硬すぎずの接し方が一番いいのかもしれない。

フィーノ「フィーノ・ラライドです、宜しくお願いします!」
真「高田 真、ガーディアンとかじゃないけど、情報収集とかなら任せてください!」
香澄「青山 香澄です、同じく情報収集役です」

皆一礼する。

カエデ「巻き込んじゃってていいの?」
レドナ「後悔はしてない、それに、必要なのは武力だけじゃない。
    心の支えにもなってくれるし」
カエデ「ふ~ん、後悔してないんならいっか」

一般人を巻き込んだことに対しての罪悪感はある。
しかし、それでも1人ではここまで辿り着けなかっただろう。
証拠として、昨日の作戦などが挙げられる。
それに、レドナの言葉を聞いて、真と香澄は照れくさそうに下を向いた。

フィーノ「ところでカエデさんとロクサスさんとはレドナさんのお知り合いなんですか?」
カエデ「ん・・・まぁ、そんなとこ・・・・かな・・・あはは・・・」

曖昧に答えるカエデに変わり、レドナがそれには答えた。

レドナ「カエデ、隠さなくてもいいよ。
    まだ言ってなかったけど、俺は昔反エクステンド機関に居た」
フィーノ「へっ!?そ、そうだったんですか!?」

驚きに、フィーノがワンオクターブ高い声を出す。
それもそのはず、エクステンドから反エクステンド機関に移ることは稀にある。
しかし、反エクステンド機関からエクステンドへは聞いたことが無い。

レドナ「あぁ、嘘じゃない。
    ・・・・でも、理由は聞かないでおいてくれるか」

少し、レドナの顔が沈む。
彼には、大きな理由があってこそ、反エクステンド機関を抜け、エクステンドへと来たのだ。
しかし、今のレドナにはそれを語れるほどの精神はなかった。
むしろ、思い出したくないのが本音だ。

フィーノ「えぇ、レドナさんがそれがいいなら」

笑顔で、フィーノはそれに答えた。

カエデ「んで、そろそろ本題に入っていい?
    こっちとしても、色々と把握しておきたいんだけど」
レドナ「あぁ、こっちも同じように話しておくこともある」

頷いて、レドナが答えた。

ロクサス「じゃ、俺たちから。
     兄貴達も魔法陣についての情報は聞いてるよな?」
レドナ「聞いてるだけじゃなくて、ちゃんと破壊もしてるさ。
    それについて、こっちも聞きたいんだが神社の魔法陣破壊したのはお前らか?」
カエデ「えぇ、そうよ。
    ってことは、あの後来たのはレドナだったんだ」

とりあえず、レドナもカエデも少し謎が解け、ホッとした様だった。
迷宮入りは、一番典型的かつ最悪なパターンだ。

ロクサス「んじゃ、また続けるよ。
     調べによると、あれもイクトゥーの仕業だってのが分かった。
     でも、今までにあのタイプの魔法陣は見たことないから何が起こるか分かんないだと」

やれやれといった感じで、ロクサスが言う。

カエデ「簡単に推測できることだけど、とりあえず分かってるのはこんぐらい。
    で、レドナの方は?」

苦笑しながら、カエデも続けた。

レドナ「神下市に全ての原因があって、イクトゥーはあえてここを狙ったこと。
    もし、何処でもいいのならわざわざ俺がいるこのテリトリーを狙うはずはない。
    それに、前にも一度イクトゥーがここに来て、仲間を全員殺された」

レドナの顔がくぐもった。
夏の風が、吹き荒れ、放課後の学校の屋上を突き抜けていた。
しかし、レドナは再び顔を上げて続けた。

レドナ「そこも考えると、時期も今でないと無理だってことかもしれない。
    要するにイクトゥー云々の攻撃を迎撃しつつ、神下市の真実を把握すべきだと思う。
    絶対に、"他にはない何か"がここにあって、それをイクトゥーは欲しているんだ」
カエデ「さっすがレドナ、秀才ガーディアンは伊達じゃないねぇ~」

感心しながら、カエデが言って、それにロクサスも同意し頷く。

真「でも、ここにそんな馬鹿でかい危ねー物があるとは思えないけど?」
レドナ「いや、その何かは発動するキーがないと、空気と同じような存在なんだ」
ロクサス「空気と同じで、発動するキー・・・?」

出てきた言葉に、疑問が生まれる。
少なくとも、レドナはもっと調べ上げているようだ。

レドナ「フィーノ、円形で、凹凸部分でも描けて、直径40センチ程度。
    それに複数で、中心に数字が書かれている魔法陣と言えば?」
フィーノ「えっと・・・特殊フィールドと、降臨の魔法陣・・ですか?」

突然質問され、必死にフィーノは思い出した。

レドナ「あぁ、たぶん配置の仕方からしても降臨の魔法陣の可能性が高い。
    降臨の魔法陣は、だいたい特定の物体の封印を開放する開放降臨型。
    それと、物体を召喚する召喚降臨型がある。
    開放降臨型は魔法陣の配置場所は、封印された物体を中心に決められている。
    となると、人目についてしまう神社などに配置する意味もわかる、ってことでこれは前者だ」

完璧な理由付きの発言に、一同は頷き感心する。

香澄「その決められている配置で、中心の場所は分からないのかなぁ?」
レドナ「だいたいの見当はつく、けど候補で32個。
    もう少しイクトゥーを泳がせて、状況をみて、2個になるまで絞る」

真「そんな、32個ぐらいの候補なら、俺たちも協力するからさっさと見つけ出そうぜ!」

真がガッツポーズを見せた。
それに続き、香澄も頷いた。

フィーノ「やる気はありがたいんですが・・・・。
     でもお2人は、今回の原因を見つけ出すのは手を出さないほうがいいと思います」

残念そうに、フィーノが言った。
しかし、これはフィーノの感情的な意見ではない。
ガーディアンである4人は、誰に聞いてもやめておいたほうがいい、という発言をするだろう。

ロクサス「候補を一発で見つけられたらいいけど、ほとんど罠がかけられてるんだ。
     だから、あんまりむやみやたらに突っ込んだら、こっちが危ないんだよ」
レドナ「悪いが・・・2人には怪我させたくないんだ。
    敵の高次元の罠は、人間には危険すぎる」

ほんとうに、申し訳なさそうにレドナは重い口調でいった。
それを察した真と香澄は、少し間をおいて、分かったと頷いた。

香澄「その・・・それでも、私達にできることってないかな?」

恐る恐る香澄が訊いた。
おそらく、友達だけ危険な目にあって、自分達は平然としておけないのだろう。
その気持ちは、レドナがよく理解していた。

カエデ「レドナが言ったとおり、今回の作戦は―――」
レドナ「いや、そこまで言うんなら連絡役がある」

カエデの声を、レドナが遮った。
それに、その発言は真と香澄の意志を尊重する危険な発言であった。

レドナ「一応原因を見つけ出す時は魔法陣を展開する。
    いくら魔法陣内とはいえ、連絡を入れあうことは難しい」
ロクサス「ちょ、2人をフィールドに入れる気かよ兄貴!!
     しくじったら、怪我じゃすまないかもしれないんだぜ!?」
フィーノ「そ、そうですよ!危険すぎます!」

驚いた声で、ロクサスとフィーノが言う。
フィールドというのは、範囲型魔法陣の中を指す。
一般人を魔法陣内に入れるのは簡単だ。
しかし、敵が来た際には口頭であらわせないほどの危険が伴う。
無論、魔法陣内部で敵の襲撃を受け、直撃を受ければ死ぬ。
致命傷を負う可能性も低からず高からずだ。

カエデ「まって、ロクサス。
    レドナの言うことも一理ある、後は2人が決めることじゃない?」

そういって、カエデは真と香澄を見た。
数秒、沈黙が流れた。
すると、真は重い口を開けた。

真「そんな、友達だけ危険な目にあわせられっかよ・・・。
  力が無いって言ったって、それでも俺たちは何もしてやれないなんて悔しいんだよ!!」

小さな声で呟くように、しかし力強く言った。

ロクサス「本当に、いいのか・・・・?」
真「おう、男に二言はねぇ!!」
香澄「私も!危険でも、暁君たちの力になりたいから!」

2人の必死の発言を聞いて、反対派のロクサスとフィーノは少し俯いた。
再び、沈黙が続く。

レドナ「ありがとう・・・・2人とも・・・・」

2人は、今までこんなに心のこもったありがとうをレドナから聞いたためしが無かった。
いつものにも感謝の気持ちは入っているが、その重さが違っていた。
"ありがとう"の言葉の意味を最大限にレドナが発揮できた瞬間でもあった。


それから3週間、何事も無く時は過ぎていった。
日に日に魔法陣は増え続け、候補もちゃくちゃくと絞られてきた。
時には魔法陣を張り、魔法陣内での真と香澄の様態をチェックしたりもした。
実際、レドナ達はフィールドには入り続けているから、なんとも思わない。
だが、一般人には何かしらの負担がかかる可能性がある。
しかし、2人は最初はビクビク震えていたが、次第にそれも慣れてきた。
どうやら、精神面の不安以外は物理的な負担は無いようだ。

そして、屋上での出来事から24日後、ついに候補が2つに絞られた。
ひとつは中心部に位置するホテルの地下。
もうひとつはそこから東に数キロ離れた神下大橋の中心真下であった。

しかし、もうここまで絞れば高確率で神下大橋の真下である可能性が高い。
かといって、ホテルの可能性を否定するわけではないが、常識的に考えてである。
ホテルの地下は駐車場、そんな場所に敵が危険だと知っていても欲する真実があるとは思えない。

候補が絞られたその日、レドナ、フィーノ、真、香澄、カエデ、ロクサスは鳳覇家に居た。
今日は珍しく香奈枝は帰宅が遅くなるようで、午後6時前後の鳳覇家は絶好の会議室となった。
まぁ、この点に関しては香奈枝が居ても居なくても、彼女自身真実を知っているためとやかくは言わないだろうが。

レドナ「よし、じゃ作戦の再確認だ」

6人でテーブルを囲み、その中心にレドナが対角線や、補助線の後が残っている地図を広げた。
どの線も、全て候補を絞るための上級大学受験並みの数式に用いられた物だ。

レドナ「まず、俺とロクサスで、神下大橋中心真下に行く。
    橋の手前で真は待機、俺たちが合図を出したら、カエデたちに連絡だ」
真「おうっ!任せろ!」

真の気合の入った返事を確認すると、再び作戦の確認を続けた。

レドナ「そして、カエデとフィーノで、ホテルの地下駐車場に行く。
    公園の草むら付近で香澄は待機、同じくカエデたちの合図がでたら、俺たちに連絡だ」
香澄「うん!分かった」

力強く香澄が頷く。
レドナも軽くコクンと頷いて、地図を片付けた。

レドナ「おっし、じゃ30分後、現地で広範囲魔法陣展開。
    行くぜ!!」


それから30分後、神下市ほぼ全域に及ぶ、広範囲の魔法陣が展開された。
神下市は、一時的に6人、もしくはそれを拒む敵のみの空間となった。

To be next chapter


© Rakuten Group, Inc.